桜に酔ってしまったようにフワフワしながら、坂井君の後に続いて、ズラリと並んだ出店を横目にメイン会場を真っ直ぐ歩いていく。

 祭りのメインストリートを過ぎてしまえば、もうほとんど桜の木は植えられていないせいか、この付近には驚くほど人がいない。

 あちこちに根を張って伸びている松の木の根っこに注意しながら、あたしたちは三津谷さんとの待ち合わせ場所へ向かった。

 この公園の北側には広い海浜があって、松林を抜けると海が広がり、そちらから強い海風が吹いてくる。

 あたしたちは石製のベンチに並んで座って、真っ青な空と同色の海を眺めながら、待ち人を待った。

 坂井君と、1.5人分くらいの距離を置いて腰掛ける石製のベンチは、当然ながらすごく固くて座り心地がひどく悪い。

 考えてみれば、男の子とこんな所でこんな風にベンチに隣同士で座るなんて、初めの体験だって思った。

 そんな余計なことを考えてしまったせいと、お尻の痛さが入り混じって、ますます居心地が悪い。

 人影の少ない砂浜に向かい、後ろから聞こえてくる祭り会場の賑やかさと、前方から聞こえる静かな波の音を聞きながら、あたしたちは黙り込んでいた。

 こっそりと横目で坂井君を盗み見ると、彼はまっすぐ前を向いて海を眺めたままで、何を考えているのか感じているのか見当もつかない。

 ただ、横から眺めるまつ毛の角度や、額から顎にかけてのラインや、結ばれたままの唇の形を見ながら、『ああ、やっぱり夢で見た横顔と同じだ』と思う。

 それは見慣れた光景のような、初めて見るような、不可解な感覚だった。