ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~

 今朝と同じように前後に並んで歩くあたしたちの間には、やっぱり今朝と同じように会話はない。

 友だちじゃないんだから、話題がないのは当然だけど。

 行き交う生徒たちの明るい会話や笑顔で溢れる廊下や階段を、ひたすら無言で歩き続けている自分のこの状況に、どんどん緊張が高まっていく。

 そうだ。あたしたちは気楽な友だち同士なんかじゃない。

 あたしたちは、ドナー家族とレシピエントという深刻な関係なんだ。

 ふたりの接点は、この移植された角膜と、角膜が起こしているのだろう不思議な現象。

 この嘘のような受け入れがたい事実を、なんとしてでも、どうあってもあたしが坂井君に受け入れさせなければならない。

 そうでなければ、話は始まらないんだ。

 改めて決意を強くしながら、あたしは部室の鍵を開けて扉を開き、中に入った。

 後ろで坂井君がパタンと扉を閉める音が聞こえると同時に、周囲から入り込んでいた雑音がトーンダウンして、部室内の空気が変わる。

 高まり続ける緊張感と戦いながら窓に近寄り、暗くて濃い茶色のカーテンを開けると、サッと陽射しが入り込んで薄暗い室内が一気に明るくなった。

 薄暗がりに潜んでいた室内のすべてが明るさの元に曝け出されていき、あたしは逸る鼓動を抑えるためにゴクッと唾を飲み込んだ。

 緊張が頂点に達したとき、坂井君が話し始める。

「あのさ、お前が言ってた今朝の話なんだけど……」

「嘘じゃないから! あたしが言ったのは全部、本当のことだから!」