ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~

 この先生は本当に親切で、丁寧な優しい先生だ。

 移植手術を受ける前にも、手術に伴う危険性を懇切丁寧に説明してくれた。

 極力安全に留意して手術を行うけれど、麻酔や薬に対してアレルギーを起こしたり、細菌やウィルスに感染するかもしれないこと。

 他人の臓器を移植するわけだから、拒絶反応が起きる可能性があること。

 術後、癒着がうまくいかなかったり、手術をした影響で別の眼病を発症する可能性もあること。

 もしかしたら、手術を受ける前よりも症状が悪化してしまうかもしれないこと。

 説明を聞いているうちに、正直どんどん怖くなったけれど、それでも手術を受けたいと思うあたしの気持ちは、変わらなかった。

 だって角膜移植手術をして左目の視力を回復させる以外に、お母さんが……この家族が救われる道はないから……。

 綿棒で左目の周りを拭いてもらいながら、先生の説明を逐一漏らさず聞いているお母さんの、追い詰められたような顔をチラリと盗み見る。

 あたしの目が視力を失ってしまったとき、お母さんが、お父さんやおばあちゃんやおじいちゃんから、責められていたときの表情と重なって見えた。

 あのとき家族は、答えようもないことを次々と並べ立てて、泣いているお母さんを追いつめたんだ。
  
 なんですぐに病院に連れて行かなかったのか? とか。

 どうしてちゃんと見ていなかったのか? とか。

 そもそも、なんでそんな場所に連れて行ったんだ? とか。