ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~

 遠藤さんが教室の中に入っていくのを見届けてから、庇ってくれたお礼を言おうとあたしは坂井君に向き直った。

「坂井君、ありが……」
「なあ、お前さ、なんであいつに何も言わなかったの?」

 そう問われて、戸惑った。

 あたしを真っ直ぐに見る坂井君の目が予想外に淡々と……というか、どちらかというと冷めた目をしていたから。

 イジメられていたとき、友だちから庇ってもらったことは何度もある。

 でも庇ってくれたその当人から、こんな風な冷めた目で見られたことは一度もない。

「え? な、なんでって、それは」

「お前、言いたいことあったんだろ? なのに何で黙ってたわけ?」

 それは、言ったってどうせ通用しなかったからだよ。

 遠藤さん相手に、何を言ってもムダだとわかっていたからだよ。

 そう答えようと思いながらも、声が出てこなかった。

 だって何を言ってもムダで、どんな理屈も通用しないはずの遠藤さん相手に、坂井君の言葉と理屈が立派に通用したのを、目の前で見てしまったからだ。

 あたしが言うのと、坂井君が言うのとの違いはあれども。

「俺が今言ってたこと、そのまんまお前が言いたかったことなんだろ? お前、俺がしゃべっている間ずっとそんな顔してたよな?」

 自分の顔が、さっきの遠藤さんよりも真っ赤に染まっていくのがわかった。

 そうだ。坂井君の言う通りだ。

 あたしは密かに胸のすくような思いで、ふたりのやり取りを聞いていた。

 ずっと心の底で言いたい言いたいと思っていたことを、代わりに全部坂井君に言ってもらえて、言われた遠藤さんのぐうの音も出ない様子を見ていた。

 そして遠ざかる遠藤さんの後ろ姿を見送りながら、久々に溜飲を下げていたんだ。