ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~

「負担から逃げてるって、小田川は負担背負ってるだろ? 目の」

「それはわかるけど、個人的な事情でしょ!? みんなそれぞれ事情はあっても、ちゃんと仕事を受け持ってるのに、小田川さんひとりが甘えてるじゃない!」

「ふうん。じゃあ移植手術したばかりの患者に、病院から指定されている診察を受けるよりも、クラスの仕事を優先しろってか?」

「誰もそんなこと言ってない!」

「じゃあ結局、小田川に何が言いたいんだよ。あんたは」

 呆れたような口調で坂井君は言葉を続ける。

「事情があって仕事を受け持つことができない相手に、『なんで仕事しないのか?』って問い詰めてどうするんだよ? 俺にはあんたが、小田川を自分の憂さ晴らしに利用したいだけにしか見えないんだけど」

 遠藤さんは、今度こそ完全に顔色を変えて黙り込んでしまった。

『正論という強い盾で覆っていたはずの本音を、思いもよらずに曝け出されてしまった』

 いかにも、そう顔に書いてある彼女は、剥き出しにされて突きつけられた自分の素の感情を前にどうすることもできず、動揺するばかり。

 お昼休みで賑わう廊下に立ち尽くすあたしたち三人の間には、誰が見てもわかるような気まずい沈黙が漂っていて、通りかかる生徒達が怪訝そうにチラ見していく。

 その視線すらも痛く感じるのか、唇を結んで視線を下げている遠藤さんの顔が、どんどん赤く染まっていった。

 そして坂井君じゃなくてあたしの方をジロリと睨み上げると、「もう、いい」と低い声で言い捨てながら踵を返して立ち去ってしまう。

 あたしは、遠ざかるその背中をじっと見つめていた。