ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~

「小田川」

 そのとき、ビックリするほどすぐ後ろから自分の名前を呼ばれて、感覚を麻痺させていたあたしの背筋がピンと伸びる。

 反射的に振り向いたあたしの目が、さらなる驚きで丸くなった。

「さ、坂井君?」

 声をかけてきた相手は、なんと坂井君だった。

 避けられるとばかり思っていた相手の顔を、目の前でポカンと見上げているあたしに、彼が飄々と話しかけてくる。

「今時間あるか? 話があるんだ。来てくれ」

 そう言って、あたしの返事も待たずに坂井君はクルリと背中を見せて歩き出す。

 一瞬、今朝のことで本格的に抗議されるんだろうかと身構えたけれど、あたしの足は自然に彼を追って歩き始めていた。

 彼がどんなつもりで話しかけてきたのか、あたしになにを話すつもりなのかわからないけれど、彼の方から来てくれたのなら願ったり叶ったりだ。

 このチャンスを逃す手はない。

「ちょっと」

 不満げな遠藤さんの声が聞こえてきて、あたしはハッと我に返って足を止めた。

「小田川さん、どこ行くのよ? あたしと話してる最中なのに、なにその失礼な態度」

 遠藤さんは不機嫌さを隠そうともせず、眉間に皺を寄せてあたしを睨んでいた。