ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~

「もう、ほんとにこの子ったら……。皆さん、申し訳ありません。いつもこんな調子で、娘がご迷惑をかけていませんか?」

 そう言って同室の患者さん達に頭を下げるお母さんに、皆さんが笑顔で答えてくれる。

「迷惑なんて、とんでもない」

「そうですよ。お嬢さんのおかげで、この病室がとても明るくなりました」

「へっへっへー、お母さん、聞いたぁ? どーだ、これがあたしの実力だ!」

「翠!」

 ヘラヘラ笑ったら、また左目が疼いた。

 まるで左目に、『お前に笑う資格があるのか?』と責めたてられているような気がして、目よりも心がズキンと痛む。

 それでもあたしは、笑うんだ。笑わなければならないんだ。

 家族の笑顔を守るために……。

―― ポーン。

 頭の上にあるナースコールが鳴って、『小田川さん、診察室まで来てください』って声が聞こえる。

「あ、呼ばれた。行かなきゃ」

「翠、起き上がれるか? お父さんが起こしてやろうか?」

「自分で起きられるってば。やれやれ、あたしは瀕死の重傷患者ですか?」

「軽口叩いてないで起きなさい。ほら、行くわよ?」