「今日の翠ちゃん、すっごい気迫漂ってるよ?」

「え?」

「全身から強烈なオーラが見えてるよ? これから誰かにケンカでも売るの?」

「……」

 保護メガネのせいで注目されていると思ってたけど、単純にあたしの顔が怖くて目立ってたのか……。

 坂井君に会う前に教えてもらってよかった。

「ね、ねえ千恵美ちゃん。どこか、誰にも邪魔されないような場所知らない?」

 あたしは気を取り直して、聞いてみた。

 千恵美ちゃんはますます怪訝そうな表情になって、オウム返しに聞き返してくる。

「誰にも邪魔されない場所?」

「うん。誰かとふたりきりで話し合いができるような場所」

「それ、誰かとふたりきりになりたいってこと?」

 ストレートに聞かれて、あたしはモゴモゴと口籠ってしまった。

 ここで『うん。坂井君と』と、正直に言ってしまってもいいんだろうか?

 いや、よくない。絶対に誤解されると思う。

 坂井君に迷惑を掛けたくないけど、だからと言ってさすがに本当のことは言えないし、どう言ってこの場を切り抜けようか……。

 ひたすら視線を泳がせて、小鳥のように首をカクカク動かしながら思案していたら、千恵美ちゃんの目がハッと見開かれた。

 そして彼女は素早く四組のロッカーの方を見て、あたしの胸をパシパシと平手で叩きながらほくそ笑む。

「やだ、ちょっと! そういうこと!? 坂井君に!? そういうことなの!? きゃー!」

 ……あ。もうすでに誤解されてしまった……。