「お母さん、見て見て。集団登校してるピカピカの一年生、なんだかヒヨコの行列みたいだね」

「……そうね」

「やっぱり新一年生は可愛いね。あ、あたしも新一年生か。ずいぶん古びた新一年生だなあ。あはは」

「そうね」

「あー、ほら、川沿いの桜がずいぶん咲いてるよ! 今年はうまくゴールデンウィークと桜祭りが重なるみたいでよかったね!」

「そうね。……ねえ、翠」

「なに?」

「お母さんちょっと考えてみたんだけど、連休終わったら……心療内科受診してみない?」

 真っ直ぐ前を向いたまま、何気ない口調でそう言うお母さんの目つきは、わずかに泳いでいた。

「もちろん、翠が嫌なら受診することないのよ? でもせっかく先生がああ言ってくださっているのを、お断りするのもなんだか、ね」

「うん、そうだね」

 あたしはあっさり同意して頷いた。

「実はあたしも、同じこと考えてたんだ。やっぱり受診してみようかなって」

「そうなの?」

「うん。だってちゃんと診てもらった方が安心なんだもん」

「そうよ、その通りよ。じゃあ早速予約を入れておくわ」