ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~

 自分の肩越しに、会ったことのない誰かの影が見える。

 あたしが自分で背負うと決めた罪が、こんな思いもよらない形となって、のしかかっている。

 お腹の底がじんわり冷えるような恐怖心と戦いながら、あたしは鏡にグッと顔を近づけて、自分の左目を瞬きもせずにじっと見つめた。

 ……ほら、存在している。

 髪の毛よりも細い糸で縫い付けられた他人の角膜が、こうして、ここに存在している。

 決して離れないように、あたしの目をしっかりと覆っている角膜は、紛れもない現実なんだ。

 しばらくの間、鏡を隔てた自分自身とそうして真正面で向き合いながら、心の中で葛藤したあげくあたしはついに決意した。

 こうなったら、坂井君に事実を確かめるしかない。

 これがどういう現象なのかはわからないけれど、なにかが確実に自分の中で起こり始めている。

 それを見極めるためには、まず、坂井君と話すべきだ。

 夢を見始めたときから、あたしにはずっと気になっていることがあった。

 夢の中でお兄さんは、坂井君や親友さんに、それぞれ『ある言葉』を伝えたいと願っている。

 でも音のない世界の中でそれはどうしても叶わなくて、あたしは身を焼くようなもどかしさと切なさを味わっていた。

 このあたしの気持ちは、お兄さんの気持ちでもある。

 つまりお兄さんは、伝えたい言葉を告げることができずに逝ってしまったことが、心残りなんじゃないだろうか?