ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~

「翠(みどり)。翠、翠……」

 誰かに名前を呼ばれながら体を揺すられる振動に、あたしは唐突に夢の世界から現実に引き戻された。

 見るからに心配そうな表情をしたお母さんが、あたしの顔を覗き込みながら肩を揺すっている。

 お母さんの隣にはお父さんもいて、ベッドの足元にはおじいちゃんもおばあちゃんもいて、みんな心配そうな顔であたしの様子を窺っていた。

 あたしは急いで笑顔を作って、元気に朝の挨拶をする。

「あ、おっはよー!」

「翠、どうしたの? そんなグッタリして具合悪いの?」

「グッタリなんかしてないよ。ちょっと寝不足だったからウトウトしただけ」

「夕べ眠れなかったの? そんなに痛かったの? まだ痛い? 朝ごはんは食べられたの? 具合はどう? 先生はなんて言ってた?」

「ちょ、ちょっとちょっとお? まずはどの質問からお答えしましょうかあ?」

「もう! そうやって茶化さないの!」

「翠、ふざけてないでちゃんと答えなさい。みんな心配してるんだぞ?」

「翠ちゃん、具合はどうなの? 大丈夫?」

「大丈夫だってば~」

 深刻な顔をしているみんなを見回しながらヘラヘラ笑って見せたら、途端に手術した左目に痛みが走った。

「いててて!」

「ど、どうしたの!?」

「眼球動かすとまだ痛いから。でも右目で物を見ると、つられてどうしても左目も動いちゃうんだよねえ。うーん、困ったもんだ。あっはっは」