ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~

 自分で自分に問いかけても、確実に安心できるような答えはどこからも返ってこない。

 それでも必死に疑惑と不安を頭から振り払って、あたしはいつも通り制服に着替え始めた。

 気にしない、気にしない。きっと大丈夫。なにも心配はない。だからあたしは、なにも考えなくてもいいんだ……。

 心の中で呪文のように唱えながら、可愛い猫のワンポイント刺繍が入っている新品のソックスを履こうとして、ふとその手が止まった。

 なんだかこの柄、子どもっぽ過ぎない? ハートマークとかもついてるし、これから学校に行くのにこれはないでしょ?

 そう思って当たり前のように学校指定のソックスを履きながら、あたしは自分の無意識の変化に気づいてゾッと寒気を覚えた。

 学校指定のソックスなんか、入学式以来一度も履いたことはない。

 このソックスは数日前にお店で見つけて、大喜びで買った物で、学校で猫好きの千恵美ちゃんに自慢するのを、つい昨日まであんなに楽しみにしていたのに。

 前髪をとめる色鮮やかなカラーピンを見ても、今日はまったく胸が弾まない。

 逆にそのカラフルさが落ち着かなく感じられて、あたしは真っ黒なヘアピンで髪をとめてから、壁に立てかけてある姿見で全身を眺めた。

 鏡に映っているのは、小田川翠。間違いなくあたしだ。

 でも、なにかが違う。いつものあたしとは、ほんの僅かになにかが違っている。

 誰に気づかれなくても、あたし自身がそれを一番知っているんだ。