ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~

 これはどういうことなんだろう? あたしはいったい、どうしてしまったというんだろう?

 まさか、亡くなった坂井君のお兄さんの自我が、あたしの自我を侵食し始めている……なんてことはないよね?

 たしかにお兄さんとあたしの記憶や感情は、夢の中でシンクロしているらしい。

 それだけでも充分ありえないことなのに、いくらなんでもさすがにそんな非常識なこと、ないよね?

 だってもし仮にそうなのだとしたら、この先あたしはどうなってしまうのよ?

 あたしの意識は、あたしという存在は、この世から消えてしまうの?

 そんなの、ないよね? いくらなんでも、そんな恐ろしいことは起きないよね!?

「翠ー。今日もいつも通りの登校時間でいいのよねー?」

「う……うんー。いつも通りでいいよー」

 階下からのお母さんの問いかけに答えるあたしの声が、微妙に震えている。

 あたしは机の上で充電していたスマホに飛びついて、大急ぎで検索し始めた。

 臓器移植。ドナー。自我の侵食。……思いつく限りの単語を入力して調べてみたけれど、見つかる記事はどれも眉唾なものばかりだった。

 つまり、そんなことは現実にはないってことだよね?

 今朝のことはただの偶然で、心配しなくてもいいってことなんだよね?