ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~

「あ、う、うん。一年一組の小田川翠です」

 結局は自己紹介そのもののフレーズを口にしながら、あたしは自分より頭ひとつ分背の高い彼を真剣に見つめた。

 要求されていることを理解したらしい彼は、少し躊躇しているような表情で答える。

「一年四組の、坂井望(さかい のぞむ)」

 坂井望……。

 ……やっぱり知らない……。

 夢の少年の正体は、ドナーの記憶なんてドラマチックなものじゃなくて、単純に昔の同級生でした。

 そんな結末を期待して、過去に埋もれた記憶を引っ張り出そうとしたけれど、いま聞いた名前は記憶の引き出しのどこにもない。

 彼の態度からみても、あたしとは初対面であるのは確かだろう。

 だったら、ますます奇妙だ。なぜあたしは知らない人の夢ばかり見てしまうんだろうか?

 しかも家族しか知らないような、彼の日常的な姿の夢を。 

「じゃ、そういうことで」

 頭をひねってあれこれ考えを巡らせているうちに、彼は逃げるようにサッサと生徒玄関へ向かって歩き出す。

「あ、あの……ちょ……」

 ちょっと待って。そう言おうとしたけれど、呼び止めたところでなにを話すの?

 あぁ、どうしよう。どうすればいい!?

 あんまりにも事情が異常過ぎて、唐突過ぎて、どう対処すればいいのかぜんぜん頭が働かない!