ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~

 心臓が破裂するかと思うほど大きな鼓動を打って、一瞬、息が止まる。

 今自分がこの目で見ているものがとても信じられなくて、パニックに陥りそうだ。

 だってあたしの両目が捉えている、こちらに向かって歩いてくるその人物の姿は……。

 夢に出てくる、あの少年……だったから……。

「……」

 ポカンと開いた口を閉じることもできないでいるあたしに向かって、彼はどんどん、どんどん近づいてくる。

 その姿を瞬きもせずに見つめるあたしの頭の中は真っ白で、背中からドッと大量の汗が噴き出し、手足が痙攣みたいに小さく震えていた。

 あの目、あの輪郭、あの唇、あの髪。

 ……間違いない。彼だ。夢の中の彼だ。

 夢の彼が、現実にこの学校の制服を着て、スクールバックを肩から下げて、黒い革靴を履いて、一歩一歩こっちに向かって歩いてくる。

 なにこれ? いったいどういうこと?

 あたしの想像の産物でしかないはずの彼が、なんでここにいるの?

 激しい混乱のせいで身動きできずに突っ立っているあたしの視線と、彼の視線が絡み合った。

 いまにも気を失ってしまいそうなほど動揺しているあたしは、さぞかし異様な表情をしているんだろう。

 彼は引き気味に一瞬あたしを見つめて、すぐに危険物でも避けるように視線を逸らして、足早に横を通り過ぎようとした。