ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~

 まず保護メガネは、さっそく次の日からめでたく卒業。

 毎日の学校の送迎も、あれからすぐに夏休みに入ったこともあり、二学期からは自転車で通うように言われた。

 で、自転車で通学するようになって、そこに颯爽と登場したのが坂井君だった。

『道中、なにが起こるかわからなくて心配だから』って理由で、毎日の登下校に彼が必ず同伴するようになってしまった。

 なんかこれって、お母さんから坂井君にバトンタッチされただけなような気がするのは、あたしだけ?

「過保護に扱われている状況に、変わりない気がする」

「あ? なんか言ったか?」

「いーえー。べつになにもー」

 体育館脇の自転車置き場から自転車を出し、校門を抜けて真っ直ぐの道を、坂井君と一緒に進んで行く。

 平地の秋の訪れは山に比べればゆっくりだけれど、それでも背高のっぽのコスモスや、ススキの穂がフサフサ風に揺れる様子は、たしかな季節の移り目を感じさせてくれた。

 道端の名前も知らない樹に、小さい真ん丸な赤い実がたくさん成っていて、着ぶくれしたように膨らんだスズメが一心不乱に啄ばんでいる。

 この辺はちょっと大きな河沿いで、風を遮ってくれる物があんまりないから、そろそろ本格的になってきた秋風が盛大に頬にあたって冷たい。

 保護メガネなしの両目にも、澄んだ風が吹きつけてスースーして、あたしは目を瞬かせた。

「ねえ坂井君、どこのコンビニ寄るの?」

 そう聞きながらパッと振り返ったら、すぐ後ろにいるはずの坂井君がいない。

 あれ?っと思って自転車を停めて背後を探したら、少し離れた場所で、彼はボンヤリ河を眺めていた。

 河の流れに沿うように吹く冷たい風が、夏の頃より少しだけ伸びた髪をふわりと撫でて通り過ぎていく。

 日が西に傾いて薄暗さを増した空気の中、くすんだ銀色と影に染まった水の流れを追いかける彼の目は、河ではない何かを見つめている。

 あたしはゆっくりと自転車を引っ張って、彼の元に近づいて声をかけた。