だからせめて、責めないでほしいんだ。

 こんな理不尽な世界で、そんな不運を受けいれて、それでも歯を食いしばって生きている人たちを、そして自分を責めないで。

 この左目は、たしかに悲劇だったのかもしれないけれど、その延長にあたしはこの角膜を受け取った。

 それは、悲劇ではなかったよ?

 罪悪ではなかったんだよ。

 誇れる物を受け継いだあたしは、それに相応しくありたい。

 胸を張って前を向きたい。

 理不尽な世界の中で、この角膜と共に生きるあたしを、この角膜を渡してくれた人たちを、その願いを、思いを、価値あるものだと思ってくれるのなら……

「どうかお願い。偽りじゃない笑顔で、笑って……」

 家族みんなが見ている前で、あたしの両目から涙がポロポロと頬を伝って、顎の先から落ちていく。

 こんなに泣いているのに、こんなに満ち足りているのが不思議だった。

 フルフル震える唇で吸って吐く息が熱くて、心の奥がギュッと痛くて、顔も涙の雫も燃えるよう。

 胸一杯に込み上げる感情を噛みしめながら泣き笑いしているから、かなりヘンテコな笑顔になっちゃってるかもしれないけど、それでもあたしは確信している。

 今まで家族の前で笑っていた、この何年間のどの笑顔よりも、あたしはちゃんと笑えているよ。

 ねえ、そう思わない? お父さん。

 おじいちゃん。おばあちゃん。そして……。

「お母さん……」