目の前の光景は、夢とまったく同じだった。

 お世辞にも広いとは言えないスペースを取り囲む真っ白な壁と、真正面の窓と、その横に置かれている観葉植物の鉢。

 そして壁側のベッドに横たわる、坂井君のおばあちゃん。

 白い掛布団が呼吸につれてゆっくり上下している様子まで、そっくりそのままだった。

「ばあちゃん。俺だよ。望」

 坂井君が声をかけながら近づいていく。

「悪いけど、起きて。おーい、ばあちゃん聞こえる?」

 ベッドの端から覗き込むようにして声をかけても、おばあちゃんが起きる気配はない。

 坂井君は、反対側の壁際からパイプイスを二脚持ってきてベッド脇に広げて、あたしに勧めてくれた。

「座れよ」
「うん。ありがとう」

 坂井君の隣に座って、彼と同じように覗き込んで見たおばあちゃんの顔を、なんと表現すればいいんだろう。

 短い髪は真っ白で、眉もまつ毛も薄くなり、全体が皺々に萎んでいて、口元は窪んでいる。

 ひと言で言えば、お年寄りの顔。そう一括りにするしか表現のしようがない。

 他人には、他のお年寄りとはあまり区別もつかない顔になってしまうのが、年を取るということなんだろうかと漠然と思った。