ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~

 頭の中は、『どうしようどうしよう。どうしたらいいんだろう』って言葉ばかりが高速でグルグルして、眩暈がする。

 激しい動揺と動悸のせいで、胸がすごく苦しくて、うまく呼吸ができない。

 まさかお母さんに会ってしまうなんて。なんでこんなことになるの?

 ……一生……一生、会いたくなかったのに!

「小田川さんのご家族も、ここに入所してらっしゃるのかしら?」

「は、はい。あ、いいえ。そういうわけじゃ、なくて」

 頭を下げたままの体勢で、掻き消えそうな声でしどろもどろに答えた。

 お母さんに自分の姿を見られることが、怖くて怖くて堪らない。

 この左目をお母さんに見られるなんて、そんな恐ろしいこと耐えられない……!

 必死に俯き続けるあたしの全身に、お母さんの視線を感じる。

 まるで体中に針が突き刺さっているような感覚を覚えて、強烈な緊張と痛みに晒され、今にも呼吸が止まってしまいそうだ。

「あら、じゃあもしかして、望と一緒にうちのおばあちゃんのお見舞いに来てくれたの?」

 軽く弾んだその口調から、『この子もしかして、息子の彼女?』って思っているらしい気配が感じられて、泣きたくなって唇をギュッと噛んだ。

 ……違います。違うんです。

 あたしの正体は、そんなんじゃないんです。

 この左目には、あなたに見せられない左目には、あなたの、亡くなった息子さんの角膜が……。

「小田川さん、そんな畏まらないで、どうぞ顔を上げてちょうだい」