ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~

 ……母さん!? 母さんって、この人坂井君のお母さん!?

 なんで!? なんでここにいるの!?

「母さん!? なんでここに!?」

 軽いパニック状態のあたしの心の叫びそのままに、坂井君がお母さんに向かって驚いた声を出す。

 坂井君によく似た面差しのお母さんは目を丸くしながら、タオルを両腕に抱えて小走りに近寄ってきた。

「なんでって、明日は用事ができて来られなくなっちゃったから今日来たのよ。あんたも来てたの? 言ってくれたら一緒に来たのに」

「あ、うん、あー……」

 口ごもる坂井君を訝し気に見ていたお母さんは、隣で硬直しているあたしに向かって、やっぱり訝し気な表情で軽く頭を下げた。

 反射的に頭を下げるあたしのことを、坂井君が動揺しながらお母さんに紹介する。

「あ、こいつ、小田川っての。同じ学校のやつなんだ」

「初めまして、望の母です。いつも望がお世話になってます」

「お、小田川、翠です。あの、こ、こちらこそ……」

 ……こちらこそ。

 その次に、なんて言えばいい?

 こちらこそお世話になっています? あなたの亡くなった息子さんの角膜に、本当にお世話になっているんですって?

 そんなの、どのツラ下げて……。

 ギュッと握った指が震えて、暑さとは違う汗が額に滲んだ。