ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~

「小田川、鍵出して」
「うん」

 天文部の部室の前で、スカートのポケットの中から出した鍵を差し込んで扉を開けても、以前ほどは喉を突くような埃っぽさを感じない。

 坂井君と一緒にここに来るたび、窓を開けて換気しているからだろう。

 今日もカーテンを開けて窓を開けると、強い日光に熱された風がふわりと入り込んできた。

「熱風が入ってきても、ぜんぜん涼しくならないよね」

「でも窓を開けて換気するのは、すごく大事なことなんだ。日光と風が届かないと、すぐに部屋の中に嫌な臭いが充満すんだよ」

「……なんか坂井君、うちのお母さんみたい」

「高校男児を主婦と一緒にすんな。一時期、ばあちゃんを自宅で介護してたから知ってるだけだよ」

 その話を聞いたあたしの脳裏に、今朝の夢が甦る。

 坂井君のおばあちゃん? 介護? それってもしかしたら……。

「あのさ、ひょっとして坂井君のおばあちゃんって、今は老人ホームにいるんじゃない?」

「なんで知ってるんだ? 要介護の度合いが進んでから自宅じゃ面倒みられなくなって……」

 そこまで言って、坂井君はいったん言葉を切って、あたしをじっと見る。

「夢って、俺のばあちゃんの夢?」

「たぶん、そうだと思う」

 大きく頷くあたしを見て、坂井君も納得したように何度も頷いた。