ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~

「どうだ? なにか変わったことはなかったか?」

「うん、実は、あった。また夢を見たの」

「え!?」

 坂井君の表情が、のんびりした笑顔から驚きの表情に変わった。

 ここしばらくの間、なんの変化も起きていなかったから、てっきり今日も『なにもなかった』という返事が返ってくるとばかり思い込んでいたんだろう。

「ほんとか!? どんな夢だった!? ……いや、ここじゃ詳しく話せないよな。部室行こうぜ」

 声のトーンを抑えた坂井君は、あたしの手からサブバッグを取ってスタスタと歩き出す。

 あたしは慌てて後を追いながら、バッグの取っ手を掴んで引っ張った。

「いいよ坂井君。自分で持つから」

「今さらなに遠慮してんだよ」

「だって、毎日悪いよ」

 前に風紀の置き勉チェックがあって、自宅に持ち帰った大量の辞書やら教材やらを次の日にまとめて持ってきたとき、坂井君が教室まで運んでくれた。

 それ以来、彼が毎朝あたしの荷物を持って運んでくれるのが、なぜかお約束のようになってしまった。

「今日は重くないんだから、大丈夫だよ」

「重いも軽いも関係ねえの。いいから気にすんなって」

「いいってば」

「いいって」

 廊下の真ん中でバッグをグイグイ引っ張り合っていたら、彼の手とあたしの手が偶然触れあった。

 ハッとするほど熱い彼の体温を感じて、頭の中が一瞬で真っ白になってしまったあたしは、すごいスピードで自分の手を背中に隠しながらオロオロうろたえてしまう。