ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~

 いつも通りに支度を済ませて、しっかりと保護メガネをつけて、お母さんと一緒に玄関を出ると、少しだけ後ろ髪の伸びた首筋に、夏の強い陽射しがジリリと突き刺さった。

 エアコンで快適な自家用車に乗り込み、助手席から眺める町の景色は、すっかり夏模様。

 春の頃より数段勢いの増した街路樹の葉が、太陽に照らされて艶々と輝いている。

 光を反射する屋根の色も、建物の壁の眩しい白さも、舗装されたばかりのアスファルトも濡れたように光っていて、それらを取り巻く空気さえも色濃く感じられた。

 予定の時間通りに学校に到着して、あたしを降ろした車が校門から出ていくのを見送ってから、生徒玄関を通って自分のクラスのロッカーに向かう。

 内履きに履き替えていると、あたしの名前を呼ぶ声が聞こえた。

「小田川、おはよう」

 軽く右手を挙げながら、白い夏服姿の坂井君が笑顔で近寄ってくるのが見えて、ドキンと胸が鳴る。

 でも素知らぬ顔で挨拶を返しながら、頭ひとつぶん高い彼の顔を昨日と同じように見上げた。

 桜祭りの日から、坂井君は毎朝必ず、ロッカーの所であたしを待っているようになった。

 叶さんの夢を見なかったか、なにか変わったことはないかを、あたしに確認するためだ。