目が覚めた直後のボンヤリした頭で、あたしは自分の部屋の天井の照明器具を眺めていた。

 スマホのアラームがまだ鳴っていないということは、時刻は朝六時にもなっていないはずなのに、カーテン越しに差し込む朝日はこんなに明るい。

 さすがに七月の半ばを過ぎれば、そろそろ北国の夏も本格化してくる。今日の午後もかなり気温が上がりそうだな。

 そんなことを頭の隅で考えながら、あたしは今見た夢を反芻していた。

 あの場所は、どこかの病室だろうか? 清潔そうだけど、ほとんど家具らしい家具もない殺風景な狭い部屋のベッドに、おばあさんがポツンとひとりで眠っていた。

 音ひとつ聞こえない夢の中で、痩せっぽちのおばあさんの体の上に掛かった白い布団が、ゆっくりゆっくり上下しているのが印象的だった。

 ずいぶん久しぶりだけど、感覚的にわかる。これは叶さんの記憶の夢に間違いない。

 三津谷さんの夢を見て以来、新しい夢をみることはなかったんだけどな。

 学校に行ったら、坂井君に報告しなきゃ……。

 ベッドから起き上がって窓辺に立ち、カーテンを開けると、強い陽射しが室内に飛び込んでくる。

 窓ガラスを難なく貫く強い光と熱が今の季節を実感させて、あたしは思わず左目を手で覆って庇った。