ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~

「知ることができてよかった。伝えることができてよかった。……小田川のおかげだな」

 急にこちらを振り向いた坂井君に見つめられて、その目の優しさに胸がドキンとざわめいた。

 自分の頬が勝手に赤く染まるのを感じて、恥ずかしくて目を逸らそうとしたけれど、それもできないくらい温かい彼の目に釘付けになってしまう。

 息を詰めて坂井君を見つめ返しながら、あたしは心の中で自分に言い聞かせた。

 違う。この優しくて温かい目は、あたしに向けられているものじゃない。

 保護メガネの奥にある、あたしの左目の角膜に向けられているものなんだ。

 間違えちゃいけない。この視線も、思いのこもった表情も、あたしに向けられてはいない……。

「せっかくだから、一緒に祭り会場に行こうか。まだ時間あるだろ?」

 彼からのそんな誘いの言葉に、そして特に『一緒に』の部分に、あたしの両頬と心がまた勝手にざわざわと反応して熱くなる。

 そ、それって、ふたりでお祭りを楽しもうってこと? あたしが、男の子とふたりでお祭り?

 そんなの、生まれて初めてだ……。

「行こう」

 そう言ってベンチから立ち上がった坂井君は、ゆっくりと歩き出しながら促すようにあたしを見る。

 あたしは慌てて立ち上がり、動揺しているのを悟られないように努めて無表情を装って、彼の後ろをついて行った。