ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~

「中学のとき、さ」

 ベンチに腰掛け、顔を両手で覆ったまま、三津谷さんは話し始める。

 手のひらの奥から漏れる彼の言葉は、まるで独り言のように小さくて、寂しげに聞こえた。

「一年で同じクラスになって、初めて叶と知り合ったんだ。入学してからしばらくして、叶の方から話しかけてきてくれた。……たぶん叶は、敏感に察したんだと思う」

 察したって、なにをだろう?

 声に出さないその疑問が聞こえたように、三津谷さんはすぐに答えてくれた。

「俺の生い立ちが、ちょっと普通じゃないってこと。俺さ、親父がいないんだ。小学生の頃、女つくって家を出てったの。そんな暗い影みたいなものを、無意識に感じ取ったんだろうな。あいつ優しいやつだったから」

「……」

「親父が出てったとき、お袋は口癖みたいに繰り返してた。実の息子がここにいるんだから、絶対帰ってくるって。俺もそう信じてたけど、結局親父は帰ってこなかった」

 静かな口調にまるでそぐわない深刻な内容を、淡々と三津谷さんは話し続ける。

 あたしと坂井君は、次々と晒される言葉を止めるすべもなく、相づちを打つこともできず、三津谷さんの苦い過去を聞き続けるしかない。

「それでも、親父がいつか絶対に帰ってくるって空気は、俺とお袋の間で暗黙の空気になっていた」