「ひょっとして、叶(かなと)に関係あること?」
叶……。
初めて聞くその名が、坂井君のお兄さんの名前なんだと認識するのに、ちょっとだけ時間がかかった。
あたしは意識的に瞬きをしながら、心の中で『坂井叶』という名前を繰り返した。
それが……この角膜を持って生きていた人の名前。
あたしは、お兄さんの名前すら知らなかった。
ドナーの個人情報は厳重に秘されているから、それで普通なんだけれど、角膜を奪ってしまった当人が相手の名前すら知らないなんて。
なんだか自分がひどく恩知らずで、厚かましく思えて恥ずかしくてたまらなかった。
「三津谷さんと兄貴、ずっと以前に仲たがいしたんですよね?」
三津谷さんの方から切り出してもらえて話がしやすくなったのか、坂井君が、自分とあまり身長の違わない三津谷さんの目を真っ直ぐ見ながら話し始める。
「俺、喧嘩の原因は知らないし、三津谷さんはまだ兄貴に腹立てているかもしれないけど、聞いてほしいことがあるんです」
「聞いてほしいことって?」
「兄貴、ずっと三津谷さんに伝えたかった言葉があるんです。それを届けにきました」
坂井君から目を逸らさずに聞いている三津谷さんの表情が、曇った。
叶……。
初めて聞くその名が、坂井君のお兄さんの名前なんだと認識するのに、ちょっとだけ時間がかかった。
あたしは意識的に瞬きをしながら、心の中で『坂井叶』という名前を繰り返した。
それが……この角膜を持って生きていた人の名前。
あたしは、お兄さんの名前すら知らなかった。
ドナーの個人情報は厳重に秘されているから、それで普通なんだけれど、角膜を奪ってしまった当人が相手の名前すら知らないなんて。
なんだか自分がひどく恩知らずで、厚かましく思えて恥ずかしくてたまらなかった。
「三津谷さんと兄貴、ずっと以前に仲たがいしたんですよね?」
三津谷さんの方から切り出してもらえて話がしやすくなったのか、坂井君が、自分とあまり身長の違わない三津谷さんの目を真っ直ぐ見ながら話し始める。
「俺、喧嘩の原因は知らないし、三津谷さんはまだ兄貴に腹立てているかもしれないけど、聞いてほしいことがあるんです」
「聞いてほしいことって?」
「兄貴、ずっと三津谷さんに伝えたかった言葉があるんです。それを届けにきました」
坂井君から目を逸らさずに聞いている三津谷さんの表情が、曇った。


