ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~

 たぶんお父さんたちは、本気でお母さんに責任があると思っていたわけじゃないと思う。

 その場に自分がいなかった歯痒さとか、降りかかってしまった不幸の理不尽さとか、取り返しのつかないやるせなさに、せめて文句や不満を口に出したかっただけなんだと思う。

 自分ではどうにもできないつらいことや、悲しいことが起きてしまったとき、誰かを責めれば人は楽になれるから。

 その捌け口を、あのときあたしと一緒にいたお母さんが、全部受けることになってしまった。

 結果、家族の間に『翠の目の責任はお母さんにある』っていう、暗黙の了解みたいな空気が出来上がってしまったんだ。

 その空気は、なにも言い返すことのできないお母さんと、誰かを責めて楽になりたい家族の間に、透明な深い溝を作った。

 あれ以来、お父さんたちはお母さんを表立って責めるようなことはもうしなかったから、みんな表面上は平穏に暮らしている。

 でもお母さんの心には、癒しきれない大きな傷と重いわだかまりが残ってしまった。

 そのことをあたしが思い知ったのは、あたしがまだ小学生だった頃だ。

『……んね、翠。ごめんね。ごめんね』

 自分の部屋で眠っていたあたしは、そんな囁き声で夜中に目が覚めた。

 横向きで眠っているあたしの顔の真上から、お母さんの泣き声が降ってくる。

 あたしは、目が覚めているのを気づかれてはいけない気がして、目を瞑ったままとっさに寝ている振りをした。

『お母さんのせいで、こんなことになってしまってごめんね』