「…あ、紗良ちゃん動かないで」 「え、」 瞬間、そっと私の肩に触れた彼の手に、呼吸を忘れた。 「あー、逃げちゃった」 残念そうな彼の視線を辿れば、ひらひらと宙を舞うアゲハ蝶。 私の肩に、とまっていたらしい。 なんだ、そういうことか。 彼の手が触れたことに深い意味なんてなかった。 そんな小さなことにも落胆して、彼に振り回されてばかりで。