「どう言うつもり? 押してダメなら引いてみろ、って作戦?」 じりじりと近づく距離に、同じ速度で後ずさる。 「……でも残念」 とん、と背中にぶつかる、冷たい壁の感触。 ふっ、と口角を上げてにやりと笑う彼は、思いっきり顔を近づけて。 「先に罠にかかったのは、沙良ちゃんでしょ」 吐息混じりのその声に、きゅっと胸が締め付ける。 「沙良ちゃんを罠にかけたのは、俺の方だよ」