「三葉、同情するわ。わたしが部活前にちゃんと教えてあげればよかった」 「り、莉子……?」 口から魂が抜けかけているであろうあたしの前に座る莉子は、大きく溜め息をついて話し始める。 「三葉が中庭で会ったのは、“影のプリンス”って言われてる二年の轟 秀(しゅう)よ」 「かっ、影のプリンス……!?」 あたしには裏社会の若頭にしか見えない。 あの、冷気を発する瞳が印象的な轟先輩が、影を纏うプリンスのように言われても、頷けてしまう容姿だとは思うけど。