あたしも病院送りにされるの……?


轟先輩を踏みつけたあたしは回し蹴りにされてもおかしくない。



「今度聞かせろよ」


「なっ、何を……ですか?」 



轟先輩は立ち上がるとポケットに手を突っ込む。 


校舎の隙間から射し込む茜色の光が、轟先輩を照らした。



「お前が忘れたいと言った理由だ」



あたしは、確かに忘れたいことがあるってさっき言ったわけだけど。

 
そして声を落として去るその背中は、光と影を纏う狼に、まるで羽がはえたようだった。