ヒッ……。 「勝手に全部忘れてんじゃねぇよ」 零した声音は、低く、重くて。 あたしの頭の横に乱暴に手をついて、怒りと切なさが混ざり合ったみたいな顔を近づける。 「勝手にって……っ、アンタの、せいでしょ……?嘘つき!」 何で、玲央が怒ってるの……? 怒りたいのはこっちなのに意味がわからない。 「だったら忘れてみろよ?」 あの頃にはもう戻れないってわかっていながら、その真剣味を帯びた瞳から目が離せなかった。