半ば放心状態にあるあたしへ玲央はずっと疑問に思っていた経緯を説明してくれた。
「おい、お前わかったのかよ?」
「や、やめてよ……!」
無言のまま岩のように固まるあたしの前髪をクシャリと掴んで顔を近づける。
バニラの香りはどこか切なくて……。
イタズラな子供みたいに意地悪く笑う。
「だいたいオレだって、お前が隣の部屋にいるなんて知らなかったんだよ」
「そんなの、あたしだって知ってたら……」
「知ってたら、何?」
その続きは呑み込むはめになってしまった。
玲央が、少し顔を傾けて口端を上げて笑みをおとすから。



