いやいや、何をそんな、戯言……。 「嘘だ……絶対、嘘!」 「そんなつまんねぇ嘘ついてどうすんだよ?お前だってオレん家にバニラの木があったの知ってんだろ?」 「バニラの木……?」 それは甘い甘い玲央の香り。 子供の頃、玲央の家で初めて見たバニラの木。 玲央のお母さんが“甘いスパイス”なんだって教えてくれたこと。 「あれだって香りにこだわる叔父から贈られてきたものだ。オレがこの高校受験した時に、こっちに店出してる叔父の家に居候させてもらえる話になったんだよ」 「……」