「俺の手を弾く女なんて、お前くらいだ」 瞬足でゴールテープを切った轟先輩は、人混みを割くように誰かを探して、その意思の強い瞳はすぐに見つける。 泣きたいのか笑いたいのかわからない天気雨みたいに、曖昧な表情を隠して俯いた莉子へ、そっと近づく声は……。 「足元を見てりゃあ転ぶって教えただろ?」 「……っ、」 その言葉通り、視界を地にやった莉子は、唇を噛み締めてゆっくりと顔を上げる。 莉子の瞳に映るのは、 ーーーきっと、ずっと待ち焦がれた人で。