バトンを渡されて飛び出した莉子は真剣だ。



ーーー“わたしね、どうしても行きたい高校があるんだけど”



思えばあたしは、莉子についていくように高校受験をしたけど、莉子がここに行きたいと言った理由を聞いたことはなかった。



ーーー“負けたら終わりよ!”



励ましてくれた莉子の力強い声を覚えている。



ーーー“ごめんね三葉?どうしても体育祭のリレーで負けたくないの”



莉子の揺るぎない決心は何を思い描いていたんだろう。



ーーー“忘れるって、結構辛いんだよ……”



いつだって強かった莉子は、何かを忘れようとしていたのか、それとも……。