体を引き離した轟先輩はあたしの涙を親指でそっと拭ってくれる。


暫し沈黙があたしと轟先輩を包んだ直後。



「轟先輩、すみませんでした……」



話を聞いてもらっただけでも充分だったのに。


轟先輩に、確かに救われていたのに……。



「麻白、覚えておけ。忘れることは正しくない」



そう言って乱暴にドアに手を引っ掻けると、あたしに目線を向け静かに声をおとした。



「虚しいだけだ」



一匹狼の孤独な瞳が揺れ動いた気がした。