「今さらそれに気づいても遅い。悪いが、出直してくれ」
轟先輩がそう言っても、強気なのか何なのか、玲央はポーカーフェイスを崩さない。
「出直す……?」
短く繰り返す、冷淡な、玲央の声。
「そうだ。麻白はお前を忘れたいんだ。心当たりはあるだろう?察してくれ」
刺すような口調。
玲央が一歩距離を詰めればバニラの香りが鼻を撫でる。
……胸の奥が、途端に苦しくなって、何かがつっかえたみたいに痛みを持つ。
「……お前に言われなくても、わかってんだよ」
思いがけない玲央の言葉。
反射的に顔を上げれば、ビターな瞳が迷うことなくあたしを見つめた。



