玲央と過ごした場所も、積み重ねてきた思い出も、全部優しいあの場所に置いてきたつもりだった。


あたしは、それを完全に消し去れていなくて、だから、必死に塗り潰すみたいに早く忘れたくて。



だって、そうでもしないと……。



「オレがお前のこと忘れらんないって言っても?」



甘く、ほろ苦い台詞に、揺さぶられていく。


酷く真剣な色を映した瞳は逸らされることなく、動けないあたしを真っ直ぐに見つめている。