──side壱──
 
「一緒に帰ろ?」

ドキドキしながら、やっとの思いで言った一言だった。


──傘を返されて、雨の中を走って帰ろうとする葵本の腕を掴んで引き止めた。


──細い腕。。


俺の言葉に、下を俯きながらもコクンッと頷いてくれた。


──やった、一緒に帰れる。

それがたまらなく嬉しくて、笑った瞬間、隣に何かが無いことを思い出した。



──あ、 自転車。


まぁ、今日は置いてくか──…


せっかく話せる機会だし──。

でも、何話そ───……


葵本に傘を持たせたくなかったのもあって、明日は電車で学校に行くことにした───。


少しでも濡れてほしくなくて、隣に来た葵本の方に、ほとんど傘を差した──。


───…葵本が隣に居る。

それだけで嬉しくて
傘を通して葵本に聞こえるんじゃないかってぐらいドキドキしていた───。