あの時君は、たしかにサヨナラと言った

「真奈、水谷さんみたいな男の人、どうかと思います」

メロンソーダに刺さったストローを噛みながら、真奈は憮然とする。

「え?なんで?いい奴じゃん!腕もいいし、しかもイケメンだし」

男から見ても惚れ惚れするような宗一郎を真奈が良く思っていないなんて意外だった。

「確かにかっこいいですよぉ。カットも上手だし。でもぉ…」

そこで、真奈が宗一郎たちのいるテーブルに視線を流す。宗一郎は後ろ姿しか見えないが、恋人らしい女の人は愉快そうに手を叩いて笑っている。宗一郎は話も面白いのだ。

「でもぉ、女たらしじゃないですかぁ、彼」

意地悪っぽく鼻のあたりにシワを寄せる真奈。

確かに、宗一郎は軽い。お客さんとも連絡先を交換して、時々合コンを開いたりするし(一度誘われて行ったことがあるけど女の子の全員が宗一郎目当てだった)、ナンパをしたり、SNSで知り合った女の子と会ったりもするらしい。

でも、それも、彼ほどのルックスと話術があれば、仕方ないことなのかもしれない。嫌でも女のほうから寄ってくるだろうし。

何より、宗一郎は、彼女持ちなのを隠しはしないのだ。合コンの場でも、彼女がいることは明かしていた。それでもいいから仲良くなりたいという子が後をたたないのは、宗一郎がそれだけ魅力的だからだろう。

同じ男として羨ましいことこの上ない。