あの時君は、たしかにサヨナラと言った

「武藤さんお待たせ…」

そこへドリンクバーから真奈が戻ってきた。

「あれ?真奈ちゃん」

「水谷さん…」

ん?

宗一郎を見た、真奈のテンションは明らかに降下した。

「あれ?もしかして二人ってそうゆう関係なの?」

「いや、そういうわけじゃ…」

「全然違います!」

宗一郎のからかいに、むきになって反論する真奈。

別にそこまできっぱり言い切らなくても…。

俺は少しだけ傷ついた。

「まぁ、いいや。ゆっくり楽しんでよ。俺もツレが待ってるからさ」

宗一郎が顎でしゃくった向こうのテーブルでは、俺たちのやり取りをチラチラ見ている女の人がいた。

パンツスーツを着こなした美人。きりっとした顔つきは、いかにも仕事ができそうで、多分年上だろう。会釈した俺に微笑み返す余裕すら持ち合わせている。

「めちゃくちゃ美人すね。彼女すか?」

「まぁな」

宗一郎はあっさりと認めた。

「じゃ、俺戻るわ」

「あ、はい。お疲れさまでした」

宗一郎が席に着くのを見届け、真奈に向き合うと、真奈はつまらなそうにストローを噛んでいた。

なんだか、一気に不機嫌になったみたいだ。