あの時君は、たしかにサヨナラと言った

何気なくカレンダーに視線を移すと、来週の木曜日に赤丸印がついていて、下に、(病院)と書かれていた。

実は、事前にカンペーちゃんから佐和子は病気であると聞かされていた。

けれど、具体的な病名などは知らされていなかったし、本人に訊ねることも例によって禁じられていた。

(大丈夫。いきなり倒れたり、死んだりはしないよ。多分ね)

病気と聞いて身構えた俺に、カンペーちゃんはめちゃくちゃ無責任な事を言ったのだか、確かに、この数ヵ月間、佐和子は風邪1つひいていない。

俺の疲労と手荒れと金欠病のほうがよほど深刻だ。


早寝早起きで畑仕事に精を出す佐和子は、肥満ぎみなのを除けば、すこぶる健康に見えた。

俺は、佐和子の病気とは心の病なのではないかと睨んでいる。

コミュニケーション障害とか、うつ病とか、そういうやつ。

今は心療内科へ通う若い子が多いと聞くし、まぁ、こういう時代だし。

それに、佐和子の個性的すぎる外見と言動を見ていれば、学生時代いじめを受けていたことも容易に想像できる。

うん、きっとそうだ。

佐和子はいじめれっこだったんだ。そして引きこもりになって、 お菓子ばかり食べて太ってしまったに違いない。

見事に辻褄が合うじゃないか!