「えっと……わからないな」 なんて、ウソ……。 わからないわけがない。 だって、 「この花ね、『ユリ』って言うんだよ」 私の名前も、この花と同じ『ユリ』という名前だから。 知らないフリをしたのは、ただ清水くんにそう呼ばれたかったから、という 単純な気持ちだ……。 もちろん、清水くんはこれっぽっちも気にしていない。 それどころか、私の下の名前なんて知らないかもしれない。 そう思うと、気分が沈んだ。