「いってぇー…やっぱ生身の体はいてーんだな…」


「おい、大丈夫か!?立てるか!?」


「おう、余裕。
かすり傷だけだな。」


和泉のその声に、祥也は胸を撫で下ろした。


「とりあえずよかった。」


「よくねーよ。
…なぁ、祥也。舞桜に先にコクったのは俺なんだけど」


「は?ってかお前舞桜とか呼んでたっけ」


「…和泉が生き霊だったとき、和泉は私のこと、そうやってよんでたの。
舞桜って。」


「え?……ってことはもしかして」


「やっと思い出したわ。
今のは幽体離脱になんのかな。
戻ろうとしたらすぐ戻れたんだけど。」


「そんなのどっちでもいいわ!
なぁ、春翔。本当に全部思い出したのか?」


「あぁ、たぶん全部。
優衣と、ファミレスで会った男が公園のベンチでキスしてるところを見て、落ちて生き霊になって、舞桜が俺のために諦めないで歩き回ってくれなこと
祥也に話しかけろって言ったら話しかけてくれたこと
花火を二人で見たこと
舞桜のベッドがオレンジ色だってこともな。」


「ちょ、最後のは関係ないでしょ。
和泉、テスト勉しにうちにきたことあるんだから。」


「あ、そうだった。
それに…俺が舞桜に告白して、体に戻ったら返事を聞くってことも。」


和泉がそんなことを言うから、私は顔が熱くなってしまって、下を向いた。


「でもこいつは、今俺の彼女だからな」


「祥也……」


「…なんてな。
フラれて、やるよ。」


そういって、祥也は立ち上がって行ってしまった。


「ちょ、待って!」


「舞桜!」


祥也を追いかけようとした私の腕を、和泉が掴んだ。


「選んで、今。
俺とここに残るか、祥也を追いかけるか。」


そんな……