緊張でドキドキと胸を高鳴らせながら、奏を待つ。
カチャリと食器を流し台に置く音がして、それから暖簾の下に見えている彼の足がこっちに向いた。
ゆっくりと近づいてきて、暖簾をくぐり、この部屋に入ってすぐの場所で足を止めた。
「なんですか?」
その声は、いつもより少し低い。
表情は固く、感情を表に出すまいとしているような真顔だ。
マスターだけはにこやかに、楽しげに話しかける。
「お嬢さんの演奏はどうだった?
友達として、感想を言ってあげないと」
それに対して奏は心のこもらない声で「よかったです」と、たったひと言。
褒められた気がしない……。
イマイチだったとか、下手くそだったとか、否定的な感想でもいいから、本音を聞きたいのに……。
眉をハの字に傾げる私と違い、隣に立つマスターは大きく頷き、賛同していた。
「うんうん、よかったよな〜。やっぱり生のピアノの音はいいな。
クラシックに興味のない若者にもそう思わせるんだ。お嬢さんは大したものだよ。これからもピアノの練習を頑張ってな」


