隣の車両から降りてきた奏は、私に気づかずに改札の方へと、人の流れに乗って歩いていく。
見逃すことができなくて、つい、その背中を追いかけた。
薄い水色のシャツとライトグレーのストレートパンツという装いで、夏らしく爽やかな色合いだけど、やはり長袖。
どうして半袖を着ないのだろうと、学校でも思った疑問をまた頭に浮かべながら、四メートルほど後ろを見失わないようについて行った。
奏は改札を出て階段を上り、外に出た。
強い日差しの中、大通りを西へ真っすぐに進み、改札から三ブロック先の横道へと、左に折れた。
見失わないように、でも見つからないようにと、一定の距離を置いてついて行く。
奏は細い横道を少し進み、さらにもっと細い路地に足を踏み入れる。
そして、一軒の店の中へと入っていった。
『アコール』と看板を掲げたこの店は、カフェ……というより、喫茶店と言いたい古めかしい佇まい。
高層ビルが建ち並ぶ中に、このアコールを含めた隣接する四軒が二階建ての木造家屋で、この一画だけが昭和で時代が止まっているように見える。
アコールはその左から二軒目で、他の三軒はどれも居酒屋だった。


