それはつまり……私を巡って、宏哉と争うつもりはないという宣言で……。
そんなこと、これっぽっちも思っていないのにと不満そうにしたら、奏の左手が伸びてきて私の耳からイヤホンを取り上げられた。
それは、そのまま彼の左耳へ。
イヤホンを取る際に、私の頬と耳を掠めた指にドキドキし、その動きを目で追ってしまう。
綺麗な指……。
桜貝みたいな爪は色も形も美しく、スラリと指が長い。
でも男らしさも感じられ、強さと繊細さを併せ持っているように見えた。
昔の彼の手には、何度も触れた記憶がある。
同じ歳なのに、私よりずっと大きかった。
普通の幼児には弾きこなせない曲をあんなに上手に弾けた理由には、手の大きさもあったんじゃないかと思っている。
成長した今も、やっぱり手が大きいように見えるけど……。
つい、その手を取って、私の手と合わせてしまった。
「だから、こういうのはーー」
「やっぱり大きい。指が長いと言った方がいいかな……。
昔もこうして、大きさ比べをしたよね。覚えてない?」


