奏 〜Fantasia for piano〜


なにをしようか?
おもちゃで遊ぶか、絵本を見るか、それとも……。


向かった先は玄関で、靴を履いてそっとおばあちゃんの家を抜け出した。

田舎の夜は濃く、豊かな自然を照らすのは、外灯ではなく星と月。

まん丸お月様のお陰で、真夜中でも辺りがうっすらと見えていた。


土と砂利の混ざった道を歩き出し、おばあちゃんの家からどんどん離れる。

広い広いジャガイモ畑は、緑の中に星型の白い花を咲かせていて、昼間はとても綺麗に見える。

でも、夜に見ると、風にうねる黒い海みたい。


耳に聞こえるのは、草木の葉が擦れ合う音と蛙の声。

それから、私の知らない獣が月に向かって吠える声。


夜の田舎は不気味で、怖い。

それでも私は引き返さなかった。

ただ、帰りたくて……。

もう、おもちゃを買ってとねだったりしないし、嫌いな人参も避けずに食べる。

お手伝いもするし、これからはいい子になるから、お願い、お家に帰らせて……。